「見積もりは出せますが、やってみないと分かりません」——探偵への相談で、こう言われて不安になった経験がある人は少なくありません。確かに調査は相手の動き次第で変動します。ただ、だからといって見積もりが“ふわっとした紙”でいいわけではありません。むしろ変動するからこそ、見積もりで見るべきは「金額」よりも、金額が変わる“条件”と“止めどころ”です。

同じ「10万円」という数字でも、内訳と前提が違えば意味はまったく変わります。人数・時間・車両・経費・報告書の仕様・延長の単価・途中判断のルール。これらが明確な見積もりは、結果としてトラブルが少なく、依頼者の心理的負担も軽くなります。本コラムでは、探偵の見積もりで“本当に見るべきポイント”を、初回相談で使える質問集と一緒に整理します。

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■ 1)最初に知るべき前提:見積もりは「設計図」になっているか
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探偵の見積もりは、家のリフォーム見積もりと似ています。「壁を直す」と言われても、どの壁を、どの材料で、何人で、何日でやるのかが書かれていないと比較できません。調査も同じです。見積もりは“価格表”ではなく、“調査設計図”であるべきです。

設計図としての見積もりには、最低限次の要素が入ります。
・目的(何が分かれば終わりか)
・調査方法(張り込み/尾行/聞き込み等の方針)
・想定日数と時間帯
・人員構成(何名体制か)
・成果物(報告書・写真・時系列の粒度)
・追加費用が出る条件(延長・移動・人員追加など)
・途中で止める/切り替える判断基準

このうち1つでも欠けると、見積もりは“安く見せるための数字”になりがちです。逆に、ここが揃っていれば、たとえ総額が高めでも、納得して依頼できます。

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■ 2)まず見るのは総額ではなく「課金の単位」
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探偵の料金は、主に次の3タイプに分かれます。

(A)時間課金型(時間×人員)
例:調査員2名×6時間×単価=72,000円
→ 透明性は高いが、長引くと増える。延長単価が重要。

(B)パック(定額)型
例:20時間パック 220,000円
→ 予算上限が立てやすいが、適用条件(人数・報告書・経費)が要確認。

(C)成功報酬(成果条件)併用型
例:着手金+成功時に追加
→ “成功”の定義が曖昧だと揉めやすい。成功条件を文章で固定する必要がある。

「どれが正解」ではありません。重要なのは、あなたの案件の不確実性に合うかどうかです。行動パターンが読めていて短期集中できるなら時間課金が合うこともありますし、読めないならパックで上限を決めた方が心理的に安心な場合もあります。

ここで必ず確認したいのが、「時間」「人員」「車両」のどれが課金の主軸かです。見積もりに“1時間あたり”が書かれていても、実際は車両費や経費が膨らむ設計だと総額は変わります。

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■ 3)内訳で見るべき5項目:ここが曖昧だと後で増える
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見積もりの内訳は、次の5項目をチェックしてください。

(1)調査員の人数と役割
「調査員2名」と書いてあっても、実際に必要なのは何名体制なのかは案件次第です。例えば車移動の対象を追うなら、交代要員や車両が必要になりやすい。逆に徒歩中心で狙いの時間帯が短いなら、少人数で足りることもあります。
見るべきは「なぜその人数なのか」の理由。理由が言語化できる事務所は設計が上手い傾向があります。

(2)稼働時間の計算方法(端数の扱い)
「3時間」と言っても、集合・待機・移動が含まれるのか、現場稼働だけなのかで変わります。さらに端数が15分単位なのか、1時間単位で切り上げなのかも重要です。
よくある落とし穴は「現場までの移動が別扱いで、結果的に想定より増える」ケース。計算ルールを先に固定しましょう。

(3)車両費・機材費の扱い
車両は、尾行の難易度を下げる一方で費用が上がりやすい項目です。車両費が“1台あたり”なのか、“1日あたり”なのか、“時間あたり”なのか。ここが曖昧だと後で想定外になります。
機材費も同様で、撮影機材が基本料金に含まれるのか、特殊条件(夜間・遠距離)で追加になるのかを確認します。

(4)諸経費(交通費・駐車場・高速・宿泊)の上限
経費が実費精算なのは普通ですが、上限の考え方が大切です。例えば「交通費実費」とだけ書かれていると、遠方追尾や急な移動で跳ねる可能性があります。
おすすめは「経費が○円を超えそうな時点で必ず事前承認」と取り決めること。これだけで請求トラブルが減ります。

(5)報告書の仕様(ページ数・写真点数・提出形式)
見積もりに「報告書作成費」とだけ書かれている場合、何が納品されるかが不明です。報告書は“成果物”なので、仕様を先に決めるほど価値が上がります。
・時系列は分単位か、出来事単位か
・写真はどの程度の解像度か、枚数は目安があるか
・紙/PDF/USBなど提出形式は何か
・裁判や社内手続きに使う可能性があるなら、その想定に合うか
報告書が薄いと、結果が出ても使いにくい。逆に仕様が過剰だと費用が上がる。目的に合わせて“必要十分”に調整しましょう。

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■ 4)増えやすいのは「延長」と「追加人員」:その条件を書かせる
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見積もりで一番揉めるのが、延長です。延長が悪いのではありません。問題は「延長の判断が誰の権限で、どのタイミングで、いくらで起こるか」が曖昧なことです。

必ず確認したい質問はこの3つです。
1)延長は何分単位で発生する?(15分/30分/1時間)
2)延長の単価は見積もりに含まれている?(書面で固定)
3)延長が必要になりそうな時点で、誰が依頼者に連絡し、承認を取る?

さらに「追加人員」の条件も重要です。現場で「対象がタクシーに乗ったので車両を追加」「警戒が強いので人員を増やす」などは起こり得ます。その判断自体は合理的な場合がありますが、勝手に増えると納得できません。
ここも「追加人員が必要な場合は必ず事前承認」「緊急で承認が取れない場合の上限(例:追加1時間まで)」のようにルール化すると安心です。

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■ 5)“安い見積もり”のよくある作り方:数字が安い理由を問う
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比較すると、極端に安い見積もりが出ることがあります。そのときは「安いこと」より「安い理由」を確認してください。安い理由には、良い理由と悪い理由があります。

良い理由の例:
・対象の行動パターンが明確で短時間で足りる
・徒歩圏で交通費が少ない
・報告書を簡易版にしている(目的に合うなら合理的)

悪い理由の例:
・報告書が最低限で使いにくい
・経費や車両費が別で、後から積み上がる
・延長単価が高い(基本を安く見せて延長で回収)
・人数が足りず、成功率が下がる(結果として追加になる)

「なぜこの内訳で足りるのか」を説明してもらいましょう。説明が具体的で、目的に対して合理的なら“安さ”は武器になります。説明が曖昧なら、数字は安くても総額は高くつく可能性があります。

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■ 6)見積もり比較は「同条件」に揃える:揃えないと永遠に迷う
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探偵の見積もり比較で失敗するのは、条件が揃っていないまま比べてしまうことです。A社は2名体制、B社は1名体制。A社は報告書込み、B社は別料金。これでは安い高いの意味がありません。

比較のコツは、先にあなた自身が“共通条件”を宣言することです。
・調査は最大○日、1日○時間まで
・調査員は○名体制を基本(理由があれば変更可)
・報告書は時系列+写真(最低限この仕様)
・経費は事前承認、上限○円を目安
この条件で「見積もりを作ってください」と伝えると、比較が可能になります。事務所側も設計しやすく、あなたも選びやすい。

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■ 7)初回面談で使える「見積もり質問集」:これだけ聞けば事故が減る
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最後に、見積もりの質を一気に上げる質問集をまとめます。メモにしてそのまま使ってください。

【設計】
・今回の目的に対して、何が分かれば終了ですか?
・調査の難しい条件(警戒、場所、時間帯)は何ですか?
・最短で終えるなら、どの曜日・時間帯を狙いますか?

【費用】
・課金単位は何ですか?(時間/日/パック/成功報酬)
・時間は何分単位で計算しますか?端数切り上げはありますか?
・移動・待機は稼働時間に含まれますか?
・車両費・機材費は含まれますか?別なら条件は何ですか?
・経費は実費ですか?上限や事前承認のルールは作れますか?

【延長・追加】
・延長の単価と単位は?延長の承認は必ず取りますか?
・追加人員が必要になるのはどんな時?その場合の上限は?

【成果物】
・報告書の仕様は?写真点数の目安は?提出形式は?
・途中報告はいつ、どの手段で、どの粒度で行いますか?

【契約】
・キャンセルや日程変更の扱いは?
・支払いのタイミングは?追加費用の確定はいつ?

この質問にスラスラ答えられる事務所は、見積もりが“設計図”として機能している可能性が高いです。

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■ 8)まとめ:見るべきは「値段」ではなく「値段が動く条件」
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探偵の見積もりで見るべきは、総額の数字よりも、数字が変わる条件です。
・課金単位(時間/人員/車両)
・延長と追加のルール(単位・単価・承認手順)
・経費の上限と事前承認
・報告書の仕様(目的に合う必要十分)
・途中判断の“止めどころ”があるか

これらが明確なら、たとえ調査が変動しても、依頼者は主導権を持てます。逆に、ここが曖昧だと、後から「聞いていない」「そんなつもりじゃなかった」が起きます。

不安なときほど、数字の安さに飛びつきたくなります。でも、安心を買うなら、買うべきは“透明性”です。見積もりを設計図として読み解ければ、探偵への依頼は、感情の嵐ではなく、判断のためのプロセスになります。あなたが見積もりで見るべきは、まさにここです。

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■ 9)ケース別:見積もりが跳ねやすいパターンと、抑える工夫
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同じ調査でも、状況によって費用の跳ね方が違います。自分のケースがどれに近いかを知っておくと、「なぜこの見積もりなのか」を理解しやすくなります。

【ケースA:車移動中心で、行き先が読めない】
車移動は速度があり、分岐も多いので、徒歩より人員・車両が必要になりやすいです。ここで抑える工夫は「狙う日を絞る」こと。たとえば“毎週この曜日だけ動きがある”などの偏りを依頼者側が提示できると、張り込みの回数が減り、総額が締まりやすくなります。

【ケースB:人目の少ない住宅街・地方での張り込み】
住宅街は“見慣れない人”が目立ちます。露見リスクが上がると、調査員の入れ替えや車両位置の工夫が必要になり、結果として稼働が増えがちです。抑える工夫は、対象の出入り口・駐車位置・最寄りの目印など、現場の地理情報を事前に共有すること。現場の迷いが減れば、稼働が減ります。

【ケースC:対象が警戒心が強い/過去にトラブルがある】
警戒が強い相手は、尾行に気づくと行動を変えます。ここは“長期化”しやすいので、見積もりでは「段階方式(フェーズ)」を提案してもらうのが有効です。
例:フェーズ1=行動パターン把握(短時間)→ フェーズ2=要所での確認(集中)→ フェーズ3=必要なら補強
段階方式にすると、途中で止めやすくなり、費用が暴れにくいです。

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■ 10)見積もりの“理想形”サンプル:こう書いてあれば安心しやすい
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見積もり書の体裁は事務所ごとに違いますが、理想は「一目で前提が読める」ことです。イメージとして、次のように書かれていると透明性が高いです(数字は例です)。

・目的:特定曜日の行動確認(同一人物との継続接触の有無)
・調査日:最大2日(候補:火曜・木曜)/各日18:00〜24:00(最大6時間)
・体制:調査員2名+車両1台
・単価:調査員 1名1時間 6,000円/車両 1時間 2,000円
・基本見積:2名×6時間×2日=144,000円、車両 2日×6時間=24,000円(小計168,000円)
・諸経費:実費(上限15,000円、超過時は事前承認)
・延長:30分単位。延長は必ず事前連絡し承認後に実施
・報告書:PDF提出。時系列(出来事単位)+写真(目安20枚)を含む。作成費込み
・中止判断:対象行動が確認できない場合、1日目終了時点で方針協議(継続/日程変更/中止)

このように“金額が動く条件”が先に書かれていれば、依頼者は安心して判断できます。

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■ 11)最後の落とし穴:契約書と見積もりの「ズレ」
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見積もりが良くても、契約書に別の条件が書かれていると意味がありません。特に次の項目は、契約書で再チェックしてください。
・延長の単位と承認手順
・キャンセル料や日程変更の条件
・追加費用の発生条件(車両・経費・報告書追加)
・成果物の権利関係(再利用・複製・第三者提供の可否)
見積もりと契約書にズレがあれば、その場で修正や追記を求めるのが安全です。「口頭で言いました」は、後から証明できません。

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■ 12)チェックリスト:見積もりを見るとき、この10個だけは必ず確認
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  1. 目的と成功条件が文書で書かれている
  2. 課金単位(時間/日/パック)が明確
  3. 人員数と、その理由が説明できる
  4. 稼働時間の計算ルール(端数・移動・待機)が明確
  5. 車両費・機材費の扱いが明確
  6. 経費の上限と事前承認ルールがある
  7. 延長の単位・単価・承認手順が書かれている
  8. 追加人員の条件と上限が決まっている
  9. 報告書の仕様(内容・形式・目安)が決まっている
  10. 中止・方針変更のタイミングが設定されている

この10個が揃えば、見積もりは“安心を買える紙”になります。

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